蒲蒲線計画の問題点と修正案を考える

たーぼうです。東京都と大田区が2022年6月6日(月)、新空港線(通称「蒲蒲線」矢口渡~京急蒲田)整備事業について、整備スキームや事業費負担などについて合意をしたとのニュースがありましたが、個人的に問題が多々ありそうな計画だなと思いました。この記事ではこの計画のどこが問題でどう修正すべきなのかを述べていきたいと思います。

スポンサーリンク

計画概要

計画の詳細は、新空港線(蒲蒲線)の事業計画(案)概要 (事業計画案、事業費、費用便益比等)については以下のリンクをご覧ください。

大田区サイトより引用

工事は一期整備と二期整備に分けて行われ、まずは一期整備完成を目指すようです。

大田区サイトより引用

上の図を見ると、新空港線(蒲蒲線)開通で渋谷・新宿3丁目・池袋さらには西武池袋線、東武東上線からの羽田空港へのアクセスが劇的に改善しそうでなかなか夢のある図ですね。エイトライナー構想まで入ってたりして。気になったのは北参道駅の扱いが新宿三丁目より大きく描かれているのはどんな意図があるのかな?北参道駅ってそんなに重要な駅でしたっけ?(そんな話はどうでもよいか)

スポンサーリンク

蒲蒲線計画について個人的に問題と感じること

個人的に計画案で問題と感じるのは主に以下の5つです。

蒲田駅での東急とJRの乗り換えは逆に不便になる

大田区資料より引用

現状蒲田駅でのJRと東急の乗り換えは1~2分で済みそうですが、地下化されると5分以上かかることになりそうです。せっかく大金をかけて整備するのに、既存の乗り換え客にとっては却って不便になる工事っていかがなものなのか?って思ってしまいますね。

たまにしか乗らないであろう羽田空港利用者へのアクセス改善のために、日々通勤通学で使っている利用者の利便性が損なわれるってどうなんでしょうね。正直個人的にここが、一番引っ掛かります。

2013年に地上から地下に移動して却って不便になった東横線渋谷駅と同じような悲劇が、またここでも繰り返されるのでしょうか?と思ってしまいました。

3両編成しか対応してない多摩川線はどうするのか?

3両分の長さのホームしかない多摩川線に東横線・副都心線方面から8両10両の電車が乗り入れたら、当然のことながら駅のホーム長が足りないです。では多摩川線各駅のホームの延長工事をするとなるとかなりの大工事になるでしょう。駅によっては隣接する踏切を廃止する必要が出てくることになりそうです。挙句の果てには「一層多摩川線全線を高架化か地下化したほうが手っ取り早いのではないか」なんて話も出てきそうな気がします。

既存の3両編成列車を線内各停担当として残した上で、東横線からの乗り入れ列車は多摩川線途中駅を全駅通過とするなら、ホーム延伸は不要にはなりますが。

ウルトラC的な解決案としては10両編成の内7両をドアカットするとか、10両編成を田園調布で7両(元町中華街方面)+3両(空港方面)に分割するとか・・。さすがにちょっと無理がありますね。

下のサイトによるとその辺については今後の調整になるそうで、現時点では細かい部分を詰めるのはこれからのようです。

多摩川線の電車は18m3扉車の3両編成。

蒲蒲線の強力なライバルになりそうなJR羽田アクセス線。

交通政策審議会「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)」より引用

上の図のように、現在JR東日本が進めている羽田空港アクセス線も開通すれば、渋谷、新宿、池袋方面からの羽田空港アクセスが飛躍的に改善しそうです。しかも渋谷、新宿、池袋共に地上駅で駅ホーム位置の利便性も良く、正直副都心線から乗るよりずっと乗り換えが楽な気がします(特に荷物の多い空港利用者にとって乗り換え利便性はルート選択の重要な要素になります)。蒲蒲線にとってはかなり強力なライバルになりそうですね。

ただ、せっかく作るのであれば蒲蒲線もJRの羽田空港アクセス線もよきライバルとして切磋琢磨してお互いサービス向上に努めてほしいなと思います。現状でも羽田空港利用客をさばくためにモノレールや京急が著しく混雑して大問題という訳でも無いのですから、おのずから限られたパイの奪い合いになるわけですよね。くれぐれも共倒れにはなって欲しくないなと思います

ひとつ羽田空港アクセス線の欠点を挙げるとすると、国際線の飛行機が発着する羽田空港第3ターミナルに行くには、連絡バスか京急、モノレールへの乗り換えを要することですね。その点においては蒲蒲線にアドバンテージがある。ただ蒲蒲線も一期工事のみ完成した状態なら京急蒲田での乗り換え時間もかかるのでJRの羽田空港アクセス線有利かなと思います。

wikipediaによれば早ければ羽田空港アクセス線は2029年に開業するようです。蒲蒲線は2030年代開業を目指すようなので羽田空港アクセス線の方が開業は早いのかもしれません。

増発余地の乏しそうな東急東横線

個人的にもう一つ問題になりそうだと感じるのは、羽田空港方面からの電車が乗り入れるであろう東急東横線に増発の余地があまりなさそうに見えることです。下のリンクは自由が丘駅の平日上りの時刻表ですが、朝ラッシュ時は1時間20本の電車が運行されています。

素人的にはよくわからないですが、朝ラッシュ時でも特急急行各停が緩急接続しながら運転されていることもあり、これ以上の増発は難しいのではないでしょうか?(並行ダイヤならまだ増発は可能でしょうけど)日中は何とかなりそうですけどね。

技術的な問題が未解決な東急車両の京急線への乗り入れ構想

工事自体は1期と2期の分かれて行われる予定です。まだ先の話ですが2期工事でいよいよ京急への乗り入れをやろうとする際に問題になるのが、東急と京急の線路幅の違いです。3線軌条で乗り入れると狭軌の東急の電車が線路の中心線からずれるのでホームと電車の隙間が空きすぎる(もしくは足りなくなる)問題が発生します。フリーゲージトレインは少なくとも日本では未だ実用化されていないですし。車両の長さも異なるのでホームドアのドア位置も合わなそうです。

この問題が解決しない限り、この計画は1期工事で終わりになりそうな気がします。

そういえば、車両の長さで言えば東急多摩川線と東横線の車両の長さも異なりますね。

スポンサーリンク

私的計画修正案

上記の問題点を軽減し、新しい羽田空港アクセスの動脈を作るという目標をすべく、完全妄想ですが、私的に計画修正案を考えてみました。この案を引っ提げて次(2023年)の大田区長選に立候補したい方は個人的に密かに応援したいと思います(笑)。っていうか私自身、大田区民ではないですけど。

既存の多摩川線蒲田駅は残す。

東急多摩川線の蒲田駅は、東急とJRの乗り換え利便性を損なわない為、移転せず残すべきと考えます。また現在の多摩川線内で運転される3両編成の電車はそっくり残します。

東横線から羽田空港方面への乗り入れる列車は多摩川線内では唯一矢口渡駅のみに停車させます。このため矢口渡駅のみ2面4線化及び10両編成対応にして、多摩川線内の各停電車と東横線からの乗り入れ電車が緩急接続可能な構造にさせます。このため矢口渡駅は地下化が必要になるかもしれません。

乗り換えが便利は正義だと思います。

地下新線を矢口渡ー大鳥居間に建設する。蒲田駅地下・京急蒲田駅地下には駅は設けない。

地下新線を矢口渡ー大鳥居間に建設します(この点は変わらない)。既存の多摩川線蒲田駅は残す代わりに地下線の蒲田駅は作りません。これで建設費は大幅に浮くはずです。

またさらに建設費節約のために京急蒲田駅地下にも駅を設けない事としますこれでは東急多摩川線から京急本線への乗り換え客が困るという声もあるかもしれませんが、そもそもJR京浜東北線は京急本線はほぼ路線が平行しているので、東急多摩川線から品川、横浜、川崎に行きたい人はわざわざ京急に乗り換える必要はないですし、多摩川線から京急本線のマイナー駅に用事がある人もそう多くはないと判断して京急蒲田駅地下も作らないこととしています。(どうしても作りたいという声が強ければ作っても良いかなとは思います)。

大鳥居駅は2面3線化もしくは2面4線化で対面乗り換えを可能にする。東急車両の京急乗り入れは行わない。

大鳥居駅は2面3線化、あるいは2面4線化させます。(イメージ的には東急溝の口駅のような構造)真ん中の1線もしくは2線を東急からの乗り入れ電車が使用し、外側2線を京急が使用します(京急と東急の線路は完全に分ける)。東急からの乗入電車は大鳥居駅で折り返します。技術的な問題の未解決な東急電車の京急への乗り入れは潔く諦める案になります。

大鳥居駅は対面乗り換え可能な構造にすることで空港利用者の利便性確保に配慮します。キャリーバッグを持った旅行者でも対面乗り換えならあまり負担は感じないと思います。

まとめ

この計画、都と大田区はやる気まんまんなのでしょうが、東急と京急のやる気はどうなんでしょうかね。

東急にしてみれば空港利用客を取り込めるのならやりたいと思うかもしれないですが、多摩川線の10両編成対応工事などのお金のかかることはやりたくない(やるにしてもお金は出したくない)のではないでしょうか?

この計画に一番乗り気ではなさそうと思われるのは京急ではないでしょうか?今まで品川から乗ってくれた羽田空港利用者の内、何割かが蒲田とか大鳥居から乗るようになれば、それだけで減収要因になります。ただでさえJRの羽田空港アクセス線開通後は減収になりそうなのに。さらに大鳥居から羽田空港までフリーゲージトレインを走らせるとか面倒そうな構想を持ち出されても迷惑でしょうし、大鳥居から羽田空港間のダイヤが東急直通列車で逼迫するのも嫌でしょう。

正直京急がこの計画についてどう思っているのか気になります。

関連記事

相鉄JR直通線は、特に相鉄東急直通線開通後はさらに厳しい状況になりそうな気がします。
相鉄東急直通線は2023年3月開業予定。今は蒲蒲線含めいろんな意味で東急東横線・目黒線が注目される時代ですね。

今回はこの辺で。最後までお読みいただきありがとうございました。