株式市場に対してことごとくネガティブな発言をすることで、投資家界隈にすっかり有名になってしまった岸田総理ですが、これまでの株式市場に関連する発言をニュースへのリンクと言う形でまとめてみました。今後も発言があり次第追記してまいります。
2021年10月8日 企業の四半期開示の見直しを提案
「四半期開示を見直せば、企業は短期的な利益を追求しなくなるはず」という考えから出た発言らしいですが、なんとなく短期売買で利益を得ようとする投資家を株式市場から排除したい思惑も感じられますね。
あたりまえですが、世の中には企業の長期的成長を見込んで株を長期保有する株主も普通に存在するのですが。
個人的には、例えば四半期開示が、半年開示に変わった場合、株価のボラティリティが高まってしまうことを懸念します。例えば四半期開示から半年分開示に変われば、半年分蓄積された情報が一気に開示されるわけですから、場合によっては決算発表後かなり株価が動き、長期保有する場合にもネガティブに作用すると思います。
2021年10月11日 金融所得課税強化を当面撤回
「当面(金融課税を)さわることはしない」とおっしゃったようですが、本音は金融課税強化をやりたくて仕方ないように感じます。2022年7月の参院選で自民党が勝利したらすぐに手を付けるんじゃないでしょうかね。
でも、岸田さんが総理になってから日経平均も下がり続けているので、儲かってる人も減ったんじゃないでしょうかね。儲かってる人が減ったら金融所得からの税収も減ってしまうと思いますけどね。
まず株価が上がらないと税収の源である株の含み益が増えない(もしくは発生しない)のですが、これまでさんざん株式市場に冷や水を浴びせることばかり言った上で、さらになけなしになってしまった含み益からも増税でむしり取ろうとしているようにしか見えない点が非常に残念。
あと、日本の金融所得課税って貧乏人も金持ちも税率が一律なので、低所得者が投資から所得を得た場合、相対的に世界的にもかなりな重税がかかります。「NISAがある」というかもしれませんが、いかんせん枠が少ないのが問題ですよね。老後に2000万円お金が必要ならNISA枠も2000万円に増やすべきでは?
この辺の議論はほとんどなく、金持ちから貧乏人までまとめて一律に増税することだけを考えているように見えるのがなんだかなあって感じです。
2021年12月14日 自社株買い規制にも言及
「自社株買いで投資家に還元するのは無意味なので、その分社員の給与に回せ」と考えているのかもしれませんが、自社株買いをする企業の社員の年収が低いエビデンスとかあるのでしょうかね?
終身雇用が美徳とされ、強い解雇規制のある日本では、企業は苦しい時も雇用を守るために内部留保を厚くする必要があり、たとえ好業績であっても社員の給与を上げにくい。自社株買いをやめさせた所で社員の給与が上がるわけではないと思いますけど。
また、本当はもともと概して給与水準の高い上場企業社員の給与をさらに上げるより、非上場の中小企業の従業員の給与こそ上げないと、総理の嫌いな「格差」が拡大してしまうだけだと思うんですけどね。格差を問題視するなら最低賃金を引き上げることから考えたらどうでしょうか。
2022年1月25日 「株主資本主義からの転換」を主張
「株主資本主義からの転換」ってどういうことなのか、今一理解できていないのですが。
最終的に企業を国有化したいのか?うーんさすがにそれは無いと信じたい。
それとも上場企業を非上場にしたいのか?でも上場企業が非上場になったところで株主がいなくなるわけではないと思うのだけど。
「だからこそ市場や競争に全て任せるのではなく官民共同でそういった仕組みを作っていこうと繰り返している」
Bloombergニュース記事より引用 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-01-25/R695WRT1UM1501
この場合の「官民」って何を指すのでしょうか?。官は「政府」で、民は「国民」?。この場合の「民」には株主は含まれない?。「株主のみではなく、政府や(株主以外の)国民が企業経営に介入する仕組みを作りたい。」と言うことでしょうか?
株主の意向が企業の経営に反映されるのはごく当たり前の、普通に自然なことだと思うんですけど。だって会社って株主のものじゃないですか。そんなに介入したければ介入したい人(あるいは国)が株主になればいいのでは?って思います。
結局は「株主は短期視点しか考えない馬鹿なので、企業経営に口出ししないほうが上手くいくはず」と考えているように思います。株を保有している国民を馬鹿にしてる感を強く感じます。
2022年2月21日 株主還元で成長の果実が流出してしまっている事実を「受け止め考えることが重要」と発言
過去の一連の発言をみても、「そりゃ岸田さんだったらこういう発言をするよな」とか思ってしまいましたが、そもそも「株主還元で成長の果実が流出してしまっているのは事実」なのか?極めて疑問に感じます。
例えばグーグルやアップルなんかむちゃくちゃ自社株買いして株主還元しているけど、そのせいで成長が阻害されているのでしょうか?なんか違う気がするのですけど。
株主に還元されたお金が消費に回れば経済も活性化すると思うんですけどね。でもそういう効果は考えない?
2022年5月5日 岸田首相、「資産所得倍増プラン」を表明 貯蓄から投資へ誘導
岸田文雄首相は5日(日本時間同)、ロンドンの金融街・シティーで講演し、自身が掲げる経済政策「新しい資本主義」の具体策として、日本の個人金融資産約2000兆円を貯蓄から投資へと誘導する「資産所得倍増プラン」を始めると表明した。
毎日新聞記事「岸田首相、「資産所得倍増プラン」を表明 貯蓄から投資へ誘導」より引用
今までの発言から、株主に対して非常に冷淡な?印象のあった岸田総理ですが、突如日本の個人金融資産2000兆円を貯蓄から投資へと誘導する「資産所得倍増プラン」を始めると表明しました。金融所得課税強化を訴えていましたが、もしかして国民の金融資産を貯蓄から投資に誘導した上で金融所得課税強化をしようとしているのかな?だとしたら頭がいいですね(笑)
でもどうやって基本的にリスクを取りたがらない日本人の個人金融資産を貯蓄から投資に誘導するのでしょうか?
少額投資非課税制度(NISA)の拡充や預貯金を資産運用に誘導する仕組みの創設などを通じて「投資による資産所得倍増を実現する」とした。
毎日新聞記事「岸田首相、「資産所得倍増プラン」を表明 貯蓄から投資へ誘導」より引用
いやはや結構じゃないですか。これ本当にやるなら本気で応援しますよ。でも資産を株式に誘導した後に金融所得課税強化とかやめてくださいね(笑)。でもますます「新しい資本主義」が一体どんなものなのか?わからなくなってきました。
2022年5月27日 金融所得課税、一つの課題として議論続いている=岸田首相
岸田文雄首相は27日の衆院予算委員会で、金融所得課税について「決して終わったわけではない。与党税調や自民税調などで、一つの課題として議論が続いている」と述べた。
ロイター記事 「金融所得課税、一つの課題として議論続いている=岸田首相」より引用
5/5に「少額投資非課税制度(NISA)の拡充や預貯金を資産運用に誘導する仕組みの創設などを通じて「投資による資産所得倍増を実現する」と言ったばかりですが、発言を読む限り、この方、やはり金融所得課税強化を諦めていないように思います。
でもNISAを拡充すると基本的には税収は減りますよね。ということはNISA枠を超える部分の配当や利益確定に対する金融所得課税を強化したいのかな?なんだか飴と鞭を同時に使うような政策ですね。でもそんなことやって、日本人の資産が2000兆円も貯蓄から投資に移るのかな・・?相変わらずなんだか良くわからないんですよね。
2022年9月23日 岸田首相、NISA恒久化は必須と表明-NYSEで講演
訪米中の岸田文雄首相は22日午後、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で講演し、少額投資非課税制度(NISA)については恒久化が必須だと表明した。
bloomberg News記事より引用 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-22/RIL3KNT0AFB801?srnd=cojp-v2
NISA恒久化の意味は、もともとNISA自体が期間限定の制度だったのを、(期限を撤廃して)ずっと続けますよと言っているわけですね。個人的にはもちろん賛成です。もともと制度に期限を設けること自体が、世代間の不公平を招きかねません。
自分でも混同しがちなのであえて書くと、NISA恒久化と非課税期間の無期限化は全く意味合いが異なります。
・NISA恒久化:NISAの制度自体の期限を無くすること。
・非課税期間の無期限化:NISA枠内で運用中の資産を(どんなに長く運用しても)配当や売却益が非課税となること。
ということになります。
NISA制度が今後どうなるのか2022年9月時点でははっきりしませんが、NISA枠を超えて投資しようとすると、途端に配当や売却益に重税がかかるようないびつな制度にはならないことを祈っています。
まとめ
以上。今後も発言があり次第追記してまいります。
この人は日本経済や賃金が低迷を余儀なくされている原因をすべて株主のせいにしている気がしますね。どこからそういう発想が出てくるのか意味不明ですが。
一個人投資家としては、追記が増えないことを祈っていますが、そのうち株式市場も発言にいちいち反応しなくなってくるのではないでしょうか?
多分参院選は自民党には投票しないと思いますが、株式市場や資本主義経済に一番理解がありそうな政党(あるいは個人)に入れたいと思います。
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今回はこの辺で。最後までお読みいただきありがとうございました。